主催者挨拶
モデレーター MM総研 所長
関口 和一
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基調講演
計算機自然における生成AIとエッジAIの新たな展望
コンピューターと非コンピューターリソースが親和することで再構築される新たな自然環境「計算機自然(デジタルネイチャー)」という概念を提唱している。
この概念は計算機技術が物質世界と融合し、現実と非現実の境界があいまいになることを表している。
メディアアーティスト 筑波大学 デジタルネイチャー開発研究センター センター長
落合 陽一 氏
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AIブームとAI技術の進歩
AIブームは古くは1950年代からたびたび発生してきたが、これまでのAIブームは現実社会への適用にいたらず、ブームにとどまっていた。
しかし、現在起こっているAIブームは少し様子が異なる。
技術の向上によりAIに学習させる計算量が1990年代で10の12乗、2010年代で10の18乗、2024年では10の24乗まで増えている。
現代では計算量が10の23乗を超えると、推論性能が飛躍的に向上することがわかっている。
これは過去の研究者が予測していなかったことだ。今後も推論性能が上がっていけば、人間に近いものがつくれるかもしれない。
推論性能の向上により、世界におけるAIサービスのローンチ数は2021年に約300、2022年に約800、2023年には11月だけで400、2024年1月は600と急増している。
AIが担う分野は拡大していく
2017年は深層学習によって各種デザインの特徴をとらえ、新たなデザインを生成する「Deep Wear(ディープ・ウェア)」というプロジェクトに携わっていた。
アパレルデザイナーの山本耀司さんのデザイン画をAIに学習させて、デザインをつくらせていた。
AIがデザインしたものをどうリバースエンジニアリング(構造分析)するのかが重要だった。
2016年時点ではAIはデザイン画までしかできず、人間のパタンナーが服を作成する型紙を作っていた。
しかし、2023年には高精細な画像がつくれるようになり、人間のパタンナーの介入も不要となった。
人が少し介入するようなタスクをAIに集約するには3年ほどかかる。
すべての工程がAIに集約されるには7~8年が必要だ。
具体例でいうと、ChatGPTにプロンプト(指示文)を書かせているプロンプトエンジニアリングはあと2~3年でAIに集約され、さらに7年後にはChatGPTでの検索自体が不要になっていると予測できる。
AIとどう向き合っていくかが課題
人間とAIが協調しながら動くとき、人間の不足している能力をどうやってAIで補完していくのかが大切だ。
例えば、生成AIが作った動画が原因でSNS依存やスマートフォン依存が増える未来は望ましいものではない。
現実社会とデジタルという非現実の境界があいまいになっていく未来ではなおさら、AIとどう向き合っていくかが重要になる。
また、生成AIに入っている著作物や個人情報の扱い方も注意が必要だ。
現在でも電子機器内部の分解やソフトウエアのロック解除、生成AIの内部情報を抜き取るジェイルブレイクなどは規約で制限されている。
今後は間違いなくAIを搭載した端末を多く使うようになるが、AIが学習した情報の管理や扱いはよりセンシティブになる。
自分たちが使っている道具としてのAIをどう管理していくかを慎重に検討しなければならない。
エッジAI、生成AIの活用により我々が世界をよりよく知る、よりよく生きるための研究を進めていく。
特別講演
企業における生成AI・RAGの活用とSustainable AI
2023年3月に米OpenAIから「GPT-4」が登場して以降、生成AIの進化が加速した。
同年11月に、プロンプトに応じた関数を出力するFunction Callingの新機能を追加し、外部データベースと生成AIモデルを連携し統合するRAG(Retrieval- Augmented Generation = 検索拡張生成)技術の進化が本格的に始まった。
生成AIには情報の正確さ、社内データを参照できない、能力に限界があるなどの課題が指摘されていたが、RAG技術により解決できる素地ができてきた。
2024年は企業の間でRAG技術を活用した生成AIを導入する動きが勢いよく進んでいる。
シナモンAI 代表取締役Co-CEO
平野 未来 氏
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「Super RAG」活用で90%超の業務精度
RAGは社内データを活用するために、大規模言語モデル(LLM)が社内ドキュメントを参照する仕組みだ。
ただ、通常のRAGを活用しても、生成AIの業務における精度は40%程度にとどまる。シナモンの「Super RAG」では、非構造データである複雑なドキュメントの解析、LLMに欠けている業界知識や企業固有の知識の補完、LLMの最適化をするようなプロンプトの自動修正などの独自技術を組み合わせることで精度が90%を超え、実用化に近づくレベルとなる。
コールセンターでの問い合わせ対応では約90%の精度が出ていて、数億円の費用削減効果を見込める。貿易業務や製造業、建設業のドキュメント処理でも、情報の抽出や検索ができるようになった。
生成AIの導入戦略として、組織全体の自動化を進める際、注文頻度が少ない商品も幅広く扱って売り上げ全体を増やす「ロングテール」の業務が障壁となる。
大型の業務はRPA(Robotic Process Automation)やプログラミングに詳しくなくてもソフト開発ができる「ノーコード/ローコードツール」の組み合わせで自動化が進んできた。
しかしロングテールの業務は、ボリュームが小さくROI(投資収益率)が割に合わない。従来は自動化を手動でしていたため、コストがかかった。
そこで、自動化の自動化という考え方が重要となる。RAG技術や非構造ドキュメントの解析技術を活用し、効率的に自動化する。
クラウドとローカルの使い分けで持続可能なAIを実現
生成AIは新しいビジネスモデルの創出にも大きな影響を与えている。
生成AIに付随する追加学習サービスや半導体、ハードウエアなど既存市場も拡大する。
また、カスタマージャーニー(顧客が自社商品・サービスの購入に至るまでのプロセス)の個別最適など、顧客への提供価値の観点からもビジネスが大きく変革する。
新型コロナウイルスのワクチン開発のように、生成AIによって研究開発のスピードも加速している。
一方で、生成AIの消費エネルギーと環境負荷が深刻な課題となる。
「GPT-3」のような比較的小規模な言語モデルでも、 電力消費量をもとに計算すると年間502トンの二酸化炭素を排出する。
GPUとNPU(Neural Processing Units)、CPUの使い分け、大規模モデルと小規模モデルの使い分けなど、タスクに応じた電力効率の最適化が重要となる。
クラウドとローカルの使い分けも重要となる一方で、接続性の確保も課題となってくる。
今後、生成AIの業務での活用が一般的になると、持続可能なAIの実現が不可欠となる。
講演
AIとともに、新しい時代へ
日本マイクロソフトはOEMメーカー各社とともに生成AIを搭載したWindowsパソコンの新カテゴリー「Copilot+ PC」を6月に発売した。
Copilot+ PCはCPUに内蔵したNPU(Neural Processing Units)を活用し、ローカルでAI機能を利用できるようにした新たなカテゴリーのパソコンだ。
ユーザーをCopilot(副操縦士)のようにサポートするエッジAIを搭載しており、従来のクラウドAIと組み合わせて、ハイブリッドAIとして活用することで生成AIの活路を広げていく。
マイクロソフトは生成AIを用いた製品やサービスのブランドを「Microsoft Copilot」に統一し、すべての製品やサービスに生成AIを組み込む戦略をとっている。
日本マイクロソフト 業務執行役員
佐藤 久 氏
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日々の業務活動から学習データを自動的に収集
「Copilot for Microsoft 365」は企業が生成AIを利活用するのに有効なサービスだ。
すでに多くの企業で導入されている「Microsoft 365」にCopilotを入れ込むことで、日々の業務で扱っている資料やメールなどから社内の経験や知識・ノウハウなどの情報を「Microsoft Graph(マイクロソフト・グラフ)」に保存し、学習データとして活用する。
学習データ収集は多くの企業がAI導入時の課題として挙げるが、Copilot for Microsoft 365を活用すれば、日々の業務活動から自動的に学習データが収集される。
学習したデータはCopilot内で業務プロセス化しMicrosoft 365内に統合できる。
さらに、Copilotをクラウドのサービスや社内の独自システムにつなぐことで、Copilotがユーザーと社内外の情報をつなぐ窓口となる。
これまで各企業が投資してきたDX(デジタルトランスフォーメーション)環境とつなぐことができ、環境構築にかけた投資対効果を高めることにも寄与する。
40TOPS 以上のプロセッサーなどが基準
マイクロソフトは、NPUは「40TOPS」(1秒間に40兆回以上の演算ができる処理性能)をもつAIの演算に特化したプロセッサー、メモリーは16GB以上、ストレージは256GB以上をCopilot+ PCの基準としている。
Copilot+ PCでは、新たにCopilotキーをキーボードに搭載しており、エッジAIとしてのCopilotを立ち上げることができる。
また、エンドユーザーが必要な情報を質問するだけで、CopilotがそのPCで行った過去の作業やメール内容などの記録から情報を抽出して提供するリコール(Recall)機能も搭載している。
これはエンドユーザーが実行した作業画面を5秒ごとに録画し、Copilotがその特徴点を分析するCopilot+ PC特有の機能だ。
Copilot+ PCの強みとして、Webミーティングでの機能向上を挙げることができる。
ひとつ目の特徴として、Webミーティング中にリアルタイムでの翻訳ができる。
現状は英語への翻訳がローンチされているが、日本語への翻訳も近い将来にリリースする。
2つ目はカメラ画像の自動調整機能の向上だ。
NPUによる画像処理性能の向上で、ミーティング時のカメラ画像の輝度・明度などを自動調整し、Webカメラから目線がズレた際も目線が自動で補正される。
AIを活用したWindowsエクスペリエンスを改善
マイクロソフトはCopilot+ PCに最適化された新たな機能を開発しており、このほど発表した「Windows Copilot Runtime」もそのひとつだ。
ユーザーやベンダーのAI機能を強化するシステムで、AIを活用したWindowsエクスペリエンスを改善し、開発者が独自のアプリにAI機能を統合できるようライブラリー上に提供する。
開発者はライブラリー上のデータを活用して、少ない工数で独自のアプリを開発できる。
また、Copilot+ PCは小規模言語モデル「Phi-Silica(ファイ・シリカ)」をバンドルしているため、言語モデルをユーザー側で開発する必要がない。加えて、PyTorch now nativeやWeb Neural NetworkなどのAIフレームワークもWindows上でネーティブとして利用できる。
2025年の基本ソフト(OS)「Windows 10」のサポート終了が迫る中、マイクロソフトはCopilot+ PCのAI機能活用のプラットフォーム強化をより一層進めていく。
講演
新しいAI時代のPCをリードするSnapdragon X Elite, X Plusのご紹介
米クアルコムは半導体事業で約40年の歴史を持つ。
このほど、グローバルのエンドユーザーにパソコンを介して新しい経験を提供するためのSoC(System on a Chip)である「Snapdragon X Elite/X Plus」の提供を始めた。
Snapdragon X Elite/X Plus はAI(人工知能)コンピューティングの時代に向けて設計された革新的なプラットフォームで、ARMアーキテクチャを踏襲したOryonと呼ばれるクアルコム自社製CPUやGPU、NPU(Neural Processing Units)、などを1つのチップに集積している。
Snapdragon X Elite/X Plusは、クアルコムがWindows用に開発してきたプロセッサーの中で最も性能が高く効率的なプロセッサーだ。
開発には、クアルコムが有するスマートフォンをはじめ、VR(仮想現実)、自動車のコネクティビティのプロセッサーにおける知見を反映したものである。
クアルコムジャパン 副社長
中山 泰方 氏
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画期的なパフォーマンスと効率性
パフォーマンスでは、Snapdragon X Elite/X Plusに組み込む「Oryon CPU」と米インテルの「Core Ultra 7」と比べると、CPU性能はシングルスレッド(1コア当たり)処理でCore Ultra 7より最大54%速く処理できる。
また、Core Ultra 7のピークパフォーマンス時と同等の処理で、消費電力を65%削減できる。
マルチスレッドでも最大37%高速であり、ピークパフォーマンス時の消費電力は54%低い。
Office 365アプリの使用時にバッテリー駆動時間が40%長くなることから、CPUによる省電力化により外出時の作業もバッテリー駆動時間を気にせずにすみ、効率的に作業をこなすことが可能になる。
オンデバイスのAI実現
Snapdragon X Elite/X Plusは、米マイクロソフトが発表した「Copilot+ PC」のハードウエア要件である「40TOPS」(1秒間に40兆回以上の演算ができる処理性能)以上の要件を満たす現時点で唯一のプロセッサーだ。
Copilot+ PCが提供するライブキャプション、コクリエーターなどの新機能にも対応する能力を持つ。
複雑な計算も高速で処理できるため、インターネットに接続していなくてもデバイス上でAI処理を迅速にできるほどの能力を有する。
また、データをAI処理のためクラウドに上げる必要がないことから、より堅牢なプライバシーやセキュリティを提供することが可能となる。
ITマネジメントを簡素化
出社とテレワークを組み合わせたハイブリッドワークが主流となり、パソコンはセキュリティ面で常に脅威にさらされている。
Snapdragon X Elite/X Plusは端末上に保護機能を備えており、高いセキュリティとプライバシーの強化を可能にしている。
IT部門は端末をリアルタイムで監視し、問題発生時も遠隔から即時対応できる。
5G/4Gに常時接続し、リスクの高いWi-Fi接続が不要なため、セキュリティリスクを減らせる。
Snapdragon X PlusはOryon CPUが10コアなのに対して、X Eliteは12コアだ。
CPUのコア数とGPUの最大値に差があるものの、基本的な仕様は同じだ。
米HP、中国Lenovo、マイクロソフトなど各社から、このプロセッサーを搭載したパソコンが2024年7月から9月にかけて発売される予定だ。
クアルコムはマイクロソフトと協力してアプリのサポートを進めるとともに、国内ではヨドバシカメラ、ヤマダ電機、ビックカメラ、ケーズデンキなどのディストリビューターと直接交渉を進めて販売経路を強化している。
また、すでに開発者向けにAI パソコンのアプリ開発キットも販売しており、今後もエコシステムを広げていく。
講演
ITディストリビューション事業から見る 次世代AI PCへの期待
TD SYNNEX 代表取締役社長
國持 重隆 氏
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2024年度は「AI パソコン元年」
2025年10月の基本ソフト(OS)「Windows 10」のサポート終了に伴い2024年度以降、多くの企業でパソコンの入れ替えが進む見通しだ。
2026年度までに法人向けに約2600万台のパソコンが出荷される見通しであり、これを機にAIパソコン導入の検討が進む可能性が高い。
出典:「GIGAスクール端末と法人PC市場の3カ年出荷台数予測調査」 2024年5月©株式会社MM総研
現在販売されているAIパソコンは基本的に「Windows 11」に標準搭載されるAI機能、Copilotの活用を前提にしている。
そのためWindows 10サポート終了にあたって各企業や団体、組織は基本的に一部のAI機能は使えるが、従来のパソコンの延長線であるWindows 11 Pro搭載パソコンの導入、もしくは「Copilot + PC(AIパソコン)」のどちらかの導入を選択することになる。
すでに日本でもWebやSaaS(Software as a Service)を通じて大規模言語モデル(LLM)に接続しAIを業務で活用する法人が増加している。
言語系生成AIについては、6%の企業が本格的に導入済み、37%の企業が部分導入や検討を進めている。
出典:「生成AI/LLMの国内利活用動向調査2024」 2024年3月©株式会社MM総研
米国では30%を超える企業がAIを本格導入しているといわれており、今後日本も追随すると考えられる。
今回の入れ替え時にAIパソコンを導入しないと、パソコンの買い替えサイクルからして3~5年後までそのチャンスは先延ばしにされる。
AIパソコン黎明期の今、どういった選択をするか、企業はよく考える必要があるだろう。
ビジネスシーンにおけるAI活用の急増
パソコン端末の平均単価は近年上昇を続けており、2023年度第4四半期にはWindows 11搭載のモバイルノートブック(Core i7、16GB、256GB)の値段は平均15.7万円となっている。
このモバイルノートブックと同スペックでCopilotを搭載したAI パソコンはおそらく20万円台からの展開となる。
AIの機能を活用するのに、この4万円の差をどう見るか。
AIパソコンは労働力不足の解消やコスト削減、生産性向上などに寄与する。
また、AIは現代の職場で急速に進化しており、AIが活用されるビジネスシーンは今後、指数関数的に増えていくだろう。
Windows 10のサポート終了まで1年半、検討が急がれる。
クアルコムの「Snapdragon Xシリーズ」に期待集まる
6月18日、クアルコムジャパンは他のCPUメーカーに先んじて最新のAI パソコン環境を想定したプロセッサー「Snapdragon Xシリーズ」を発売した。
AIパソコン活用を含むDX推進・IT活用に前向きな法人は、特にクアルコムへの期待が高いという。
出典:国内PC出荷台数調査(2024年5月) 調査内で実施したユーザー意向調査より抜粋2024年5月©株式会社MM総研
業務アプリケーションとの互換性や価格、サイバーセキュリティ対策などは、PC運用の重要課題であり、AI パソコンを検討する上で二の足を踏む要素も同様だと考えられる。
AIパソコンは、パソコンの価値、パソコンを使うユーザーの価値を爆発的に上げるものだ。
一歩先を見据え、課題を上回る活用シーンを想定し、導入を検討してほしい。
パネルディスカッション
パーソナルAIの未来~次世代AIパソコンが拓くスマート社会
「パーソナルAIの未来~次世代パソコンが拓くスマート社会」をテーマとしたパネルディスカッションには、デル・テクノロジーズの山田千代子常務執行役員、日本HPの松浦徹執行役員、日本マイクロソフトの佐藤久業務執行役員、レノボ・ジャパンの安田稔執行役員副社長が登壇し、MM総研の関口和一代表取締役所長がモデレーターを務めた。
「Copilot+ PC」が「コパイロット(副操縦士)」の名を冠したように、これからの時代、AI(人工知能)はパソコン上で我々の仕事を常時アシストするようになるだろう。
AIが実現する未来、そしてその未来を実現するための課題とは何なのかを議論した。
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AIビジネスの最先端を競う4社
マイクロソフトのCopilot+ PC の要件である40TOPS(1秒間に40兆回以上の演算ができる処理性能)以上の演算能力を搭載する次世代 AI パソコンの販売が始まっている。
デル・テクノロジーズは5月にCopilot+ PCを5製品、AIの導入実装支援に必要なインフラストラクチャー、ソリューション、サービスを提供する「Dell AI Factory」を発表した。
日本HPは2023年から「HP Future Ready戦略」を掲げ、AIを含む4つの成長分野で価値あるイノベーションと持続的な成長をユーザーへ提供するポートフォリオ構築に力をいれている。
レノボ・ジャパンは「Smarter AI for ALL」をビジョンに掲げ、AIワークロードに合わせたコンピューティングパワーと体験を提供する。
2024年5月にはマイクロソフトとクアルコムとのパートナーシップのもとでCopilot+ PC「ThinkPad T 14s Gen 6」をリリースした。
日本マイクロソフトはハードウエアを製造するOEMパートナーと共に、AIを含むWindowsエコシステムを推進する。
日本HP 執行役員
松浦 徹 氏
AIがもたらすパラダイムシフト
司会 :2022年11月に米OpenAIが「ChatGPT」をリリースし、専門的知識がなくても誰もが生成AIを使えるようになった。
それを皮切りに現在、AIを活用したアプリケーションやビジネスが次々と登場し、様々な変化を生み出しているが。
山田 氏 :AIによる業務効率の向上は非常に素晴らしい。
今までであればビジネスを展開する際、アクションプランを考える前、「なぜ」を突き止めるためのデータ収集と分析に膨大な時間とエネルギーを使ってしまっていたが、AIの補助があれば、より生産性の高い「どうする」の検討に時間を割ける。
それ以外にも今後、AIの様々な活用手法が生み出されていくのが非常に楽しみだ。
松浦 氏 :AI パソコンの登場によってエッジでのAI処理が可能になったことはさらなる効率向上につながる。
また自身の今までの業務内容などを反映し、よりパーソナライズされたAIによってサポートが受けられることは、AIの活用の場をさらに広げることになるだろう。
デル・テクノロジーズ 常務執行役員
山田 千代子 氏
エッジAIはスピードに利点
司会 :オンデバイスでAI処理できるエッジAIが登場したことは、AIによるパラダイムシフトをさらに進めることになるのではないか。
安田 氏 :クラウドベースのAIとエッジAIを効果的に組み合わせて使うことで様々な課題に対応できるようになると考えられる。
例えば、AIを活用する上で避けては通れない消費電力の問題も、エッジAIでの処理を増やすことでトータルな電力消費を減らすことにつながる。
複数の大規模言語モデル(LLM)をどうやって活用していくかは今後の課題になるが、RAG(Retrieval-Augmented Generation = 検索拡張生成)の技術が誕生していることからも、まもなく解決されるだろう。
佐藤 氏 :オンプレミス(自社運用)なのかクラウドなのかではなく、シナリオに応じてどのようにAIを使うか適材適所を探していくことになるだろう。
エッジAIの良さはまずスピード。ファクトリーオートメ―ションや医療現場などではインターネットを介さないミリセカンドでの処理が必須となり、エッジAIが活躍する。
翻訳など速さが求められるシーンはほかにも多い。
そもそもCopilot+ PCが誕生したことによって非常に大きく新しいビジネスオポチュニティが誕生したことは間違いない。
エッジAIというフィールドで今まで全く想像していなかったような新しい使い方、新しいビジネスが生まれるのが楽しみだ。
レノボ・ジャパン 執行役員副社長
安田 稔 氏
Copilot+ PCの2つの機能
司会 :Copilot+ PCの注目機能として「リコール(Recall)機能」と「Windows Copilot Runtime」がある。
リコール機能は過去に自分が作成したファイルや共有されたファイルに曖昧な記憶からでもすぐにたどり着くことができるものだ。
Windows Copilot RuntimeはAIを開発する上で必要な一般常識部分をマイクロソフトがライブラリーとして提供し、アプリ開発者がAIを簡単に組み込めるようにするというが、どんな期待があるか。
松浦 氏 :リコール機能はAIがパーソナライズするために非常に重要な機能だ。
一般的な知識に加え、個人の経験や思考回路をデバイスが記憶することで、より適切なレコメンデーションやフィードバックが可能になり、これは業務効率アップにも生産性向上にも寄与する。
パーソナルAI=デジタルパーソナルアシスタント
佐藤 氏 :AIパソコンの誕生でユーザーとパソコンの関係性が変わる。
パーソナルAIとは自分の分身がパソコンの中にでき上がっていくこと。
今まではA氏とB氏が生成AIに同じことを問いかけた場合、同じ返答が返ってきた。
一方、AI パソコンに搭載されるパーソナルAIに問いかけると、質問者のコンテクストを理解した上で質問者のためだけに返答を用意してくれる。
今まで日々何気なくツールとして使っていたパソコンが、自身の分身であり、相棒であり、かけがえのないアシスタントとなって、全く異なるバリューを提供してくれるものになってくるわけだ。
この関係性は今までパソコンを使って仕事をしてきた我々にとって、全く異なる新しい価値になる。
日本マイクロソフト 業務執行役員
佐藤 久 氏
司会 :奇しくも2025年は「Windows 10」のサポート打ち切りのタイミングであり、現在多くの企業でパソコンの入れ替えが検討されているだろう。
2028年度にはパソコン出荷の65%がAIパソコンになるという予測もある。
AIパソコン普及のためには、AIができることを正しく理解して伝えることや、セキュリティを担保するための環境整備などが欠かせない。
業界全体でのパラダイムシフトの促進が期待される。
モデレーター MM総研 所長
関口 和一